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2011/04/24

お前の力を凌駕したまどか☆マギカ -BLASSREITERとまどか☆マギカの共通点

 まどか☆マギカが関東・関西地区で無事最終回を迎え、中部地区も本日放送ということで最終回とまどか☆マギカ全体に関する考察を述べてみたいと思う。11話、最終話を観ていて終始頭によぎったのは、虚淵玄脚本・構成のアニメ、BLASSREITERとの関連性である。

以下、ネタばれ有り

 最終回を迎え、まどマギはキリスト教をモチーフにしているという意見がネット上で多々見られる。確かに魔法少女達の魂の救済、贖罪という意味合いで全面的に納得しているのだけれども、一方でそれらと同様のテーマやモチーフが色濃い形でBLASSREITERでも描かれ、それらがまどか☆マギカに継承されたのではないか、とも自分は考えている。

                                                              

・BLASSREITERとは何ぞや 

 そもそもBLASSREITERとはなんぞや、という方も意外と多いと思うのでざっくりと説明したいと思う。BLASSREITERは2008年4月~9月まで全24話放送され、脚本・構成が虚淵玄・板野一郎、制作はGONZOという夢の組み合わせで一躍注目を集めた話題作である。エロゲライターである虚淵玄が初めてアニメ脚本と構成を務めるということで、ニトロプラスファンの熱烈な期待を持って迎えられた(同時にニトロアニメの前例から爆死説も濃厚ではあったが…)。

Wikipedia-ブラスレイター

 序盤はヴェドゴニアの進化系、もしくは深夜版仮面ライダーとして好評であった。
しかし、13話を過ぎてからゲッターシリーズ的な巨大ロボットが出てくるという突然の作風の変化、終盤の超展開の連続、そして何より最終回までただ寝ているだけの主人公と、サプライズの連続で視聴者は困惑の色を隠せず、結局売上・人気共に時代に埋もれてしまった悲劇の作品という感がある。しかし、一方では愛すべき作品として一部ファンに熱烈な人気がある(と熱烈なファンである私は信じている)。

 この作品は、硬派な近未来SFであるので一見魔法少女ものであるまどマギと接点がないように思えるが、基本的なテーマや、物語の解決方法など類似点が多いように思われる。

                                                              

・まどか☆マギカとBLASSREITERの類似点・共通点

 まず、まどか☆マギカの魔法少女・魔女とBLASSREITERのペイルホースには類似点がある。
BLASSREITERに出てくるペイルホースとは次世代ナノマシンであり、現代医療を超えた水準を持つ画期的な発明品であった。従来では治療不可能な肉体の損傷を癒し、奇跡を可能とする。しかし一方で投与者は肉体をナノマシンに犯されて金属生命体に変異させられ、更に理性も蝕まれ最終的に化物(デモニアック)となってしまう。中には辛うじて理性を保てる者もいるが、彼らもいつ狂気と絶望に呑み込まれるか分からない状態に立たされている。(彼らを特に作中ではブラスレイターと呼ぶ)
 BLASSREITERは基本的にこのペイルホースを身に受けた者たちが力、もしくは救いを求めてバトルロイヤルを繰り広げる物語である。ペイルホースは奇跡を可能とする一方で、暴力と呪いを振りまく化物にまで人間を変質させてしまう、という点においてまどマギの魔法少女・魔女の存在定義に類似する。

 ただここまでは類似点以前によくある設定でもある。問題は、BLASSREITERに於ける闘争の解決方法である。
 最終回、主人公であるジョセフはラスボスであり元凶であるザーギン、そしてその配下のデモニアックの軍団を止める為に、抗体(アンチ・ナノマシン)を体内に仕込み、力を振るわずにわざとザーギンの太刀を受け倒れる。
 最終的に力による解決を選ばずに、自らを犠牲にしペイルホースの呪いの連鎖を一身に背負うことで、亡者となり苦しむデモニアック、希望と絶望の間を彷徨うブラスレイター達を浄化・消滅という形で救済したのである。(抗体はイシスといい、使用しても基本的に一度ブラスレイター・デモニアックになった者は元の人間には戻れず、消滅という形でしか助からない)
ジョセフが特に救いたかったのは、恐らく最もペイルホースに狂わされた人物であるザーギンだろう。かつて虐げられていた貧しい人々を救おうと医者になった彼が抱いた希望と絶望を救いたかったのだ。

 この基礎設定から最終回の物語の完結方法に到るまで、BLASSREITERとまどか☆マギカは同じ発想を共有しているように思える。それは対話でもなく、暴力でもなく、自らを犠牲にして罪と呪いを一身に引き受けるという愛によって物語を完結させる、という発想である。そして、その発想はやはりキリスト教のイエスの磔刑を連想させる。

 ただし、まどか☆マギカではあくまでモチーフとして間接的に、明示を避けて表現されていたイエス・キリストによる救済は、BLASSREITERでは対照的にかなり直接的、具体的な形で表現されている。

                                                              

・BLASSREITERとキリスト教イメージ

 上記のBLASSREITER最終回のシーンでジョセフが語る台詞は以下のようである。

「人の子が栄光を受ける時が来た。はっきり言っておく。」

この言葉を最期に絶命したジョセフに対し勝利を確信したザーギンは皮肉のつもりでこう続ける。

「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままにとどまる。だが、もし死ねば、多くの実を結ぶ。」

 この有名な一節は、聖書正典の四福音書の一つ、ヨハネの福音書からの引用である。このザーギンの台詞の直後に、ジョセフの死によって活性化した体内の抗体が飛散してブラスレイター達の救済は為される。引用元の福音書のイエスの発言の一節は、勿論キリストの十字架の贖いを示している。ここでは明らかにイエス・キリストが直接的に表現されている。

 また、BLASSREITERは最終回に限らず、作品全体にキリスト教のイメージが織り込まれている。題名であるBLASSREITERはドイツ語で直訳すると『青ざめた騎士』となる。これはヨハネの黙示録に出てくる死を以て人類と世界を滅ぼす第四の騎士に相当する。
  BLASSREITERの世界観には、墓から蘇り徘徊する亡者と死者、世界の破滅といった黙示録的な終末論が背景としてある。神から授かった力(ペイルホース)によって希望の無い世界を否定し新世界を創ろうとするザーギンと、今在る生を肯定して絶望や呪いと正面から向き合おうとするジョセフとの対立軸で物語は基本的に進んでいく。

                                                              

・まどか=ジョセフ2世

 さて、まどか☆マギカ放送開始直後、私はネタのつもりでまどかはジョセフ2世である、と雑感で書いたが、今思い返すとそこまで間違っていなかったように思う。

 BLASSREITERの主人公であるジョセフは前線に立って戦うキャラクターではなかった。彼は、ペイルホースに感染し化物となったブラスレイター達の希望と絶望を見、彼らを苦しみから救おうと足掻いた。そして、最終的に全てのブラスレイターとデモニアックを苦しみから解放する為に自らの命を犠牲にしてイシスを拡散した。

 まどか☆マギカの主人公であるまどかも、魔法少女に変身せず、奇跡を願い呪いに犯されていく魔法少女達の姿を目に焼付け、最終回に己を犠牲にして全ての魔法少女を救った。

 最終回まで特に目立った活躍がない分、両者は視聴者の目の延長として作品世界を見ることになった。そして、その中で見出された不条理・理不尽に敗れ絶望しないために自ら救いとなろうとした。そんなヒーロー&ヒロインである。自ら、力を頼みにすることを拒み戦わなかったからこそ、どうしても力や希望を求めざるを得ないその苦しみを理解することが出来たのではないだろうか。
 奇しくもジョセフは、イエスの養父のヨセフの別読みである。こじ付けではあるが、まどかがイエス・キリストをモチーフとしているなら、その前身であるジョセフはイエスの養父ヨセフだったのだろう。

                                                              

・「俺はお前の力を凌駕した」

 さて、ここまで取り上げて来たBLASSREITERの最終回、これだけ重い台詞が乱舞しているのだからさぞや緊張感溢れた最高のクライマックスシーンの連続だと思われるだろう。しかし、実際は説明不足過ぎて何が何だか分からなかった、というのが現実であったように思う。以下が放送された件のシーンである。

「いや、わけが分からないよ…」

というのがオンエア時の視聴者から一斉に漏れた呟きである。QBでも首を振って諦めるレベル。

 解釈としては先程も言ったように、ジョセフが力を持っているにも関わらず力で以て解決するのをよしとせず、わざとザーギンに斬られた、というのが理に叶っているだろう。しかし、剣を構えてザーギンと一合斬り合う動きが「力を否定する」ということを十分に表現できているとは言い難かった。これでは、「俺はお前の力を凌駕した」と勝利宣言をした後で、何故かあっさり瞬殺されるという謎のヒーローにしか見えない… 悲しいかな…

 BLASSREITERでは、巧く伝えられなかった力の否定と魂の救済というテーマをまどか☆マギカは最後まで綺麗に描き切っていたのではないかと私は思う。文字で書く分には簡単でも、ここまで映像にして美しく表現した作品を観たのは、アニメ・エロゲを通じても初めてだった。素晴らしい作品をありがとう。

 また、一方でBLASSREITERも大変面白い作品である。骨太のテーマと併せて超展開シーンが多々あるというのがBLASSREITERの魅力なのである。そのような訳でまどか☆マギカを観終わったそこの貴方、BLASSREITERを観ればより楽しめると思いますよ。

※追記 

ブラスレイター+うめ先生(ひだまりスケッチ)のMAD。これを見た当初はまさか、虚淵玄とうめ先生が組むとは想像だにしなかったのに… 時の流れとは恐ろしいものである。

                                                              

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» 雑記「魔法少女血風録」 [HOTEL OF HILBERT]
「魔法少女まどか☆マギカ」11話、12話を視聴。 4月27日、リンクをいくつか追加。 [続きを読む]

受信: 2011/04/27 22:14

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