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2011/06/03

内家功夫は電気実妹の夢を見るか?-鬼哭街再考-

 鬼哭街のリニューアル版の発売を記念して、実妹に対する思いの丈を文章に落としてみた。

以下、鬼哭街ネタバレあり(微妙に腐り姫もあり)
プレイする気の無い人や、プレイ済の人、私と血縁エンドを迎えたい人のみ閲覧推奨。

                                                            

                                                            

・鬼の哭く街

 一応説明しておくと、鬼哭街とは2002年にニトロプラスから発売された武侠サイバーパンクノベルである。更につい先日、録り下ろしボイスを追加・CGを修正してリニューアル発売された。原画は漢を書かせたら業界随一の中央東口、脚本は今や時の人となった虚淵玄である。

 さて、内容であるが、プレイした人はご存知かと思うが、これが中国拳法家が鎬を削る武侠もの…と見せかけて実は退廃的なホラー作品であった。序盤こそ、確かに漢祭りなのであるが中盤から雲行きが怪しくなり、終盤になると背筋が凍る体験をすることになる。何に対してそこまで恐れるのか…といえばそれは実妹である。しかし、ただ言葉通りの意味ではない、実妹という名の怪物なのである…。

                                                            

・貫禄のキモウト・ルイリー

 鬼哭街のヒロイン、ルイリーは数多く存在する妹たちの中でも今尚強烈なインパクトを放っている存在に思える。
ムック本・妹ゲーム大全でも黒妹部門に堂々ランクインしており、その存在感は貫禄すらある。ちなみにこの妹ゲーム大全の巻末には、“何故か”あの虚淵さんのインタビュー記事が載っている。鬼哭街は確かに妹ゲーとは言え、もっと妹ゲーを専売特許とするライターがいたのではないか、と購入した当時思っていたのであるが、今考えてみると確かに妹の味を生かし切った鬼哭街を世に送り出したからこそあのインタビューは適役だったように思える。その中で繰り返し言及されているのが、「インセストタブーを犯す反倫理」「妹の魅力とはじっくり甘く溶かされていくかのような魅力」というものである。その二点を踏まえて考えると、鬼哭街はしっかり近親相姦の含む恐怖と快楽を忠実に描いていたと思う。それも、ただ実妹を実妹として描くだけではなく、更に別方面のタブーを絡めて恐怖と快楽を昇華させているように思えるのである。そのタブーとは、ルイリーは実妹というだけでなく、ガイノイドつまり人ではないアンドロイドという点である。

                                                            

・未来の実妹(イヴ)

 実妹とメカの融合。これこそがルイリーが、実妹達の極北と呼ばれる所以であろう。メカ・アンドロイドつまり人造美少女もまた一種の恐怖と魅惑をもたらすものであるからだ。煩雑な現実を超えた存在であり、だからこそ男達を魅了し、まただからこそ一歩間違えれば人間を辞めさせてしまうかもしれない、そんな存在。人形や人造美少女に対する情熱は、古来より連綿と受け継がれている。古くは古代ギリシャのピグマリオンから、近代のデカルト、クライスト、リラダン、近年では押井守の「イノセンス」まで声高に愛を叫び続けている。「人造美少女万歳、二次元万歳」と。間違いなく、人形愛の行き着く先は現実を超えた楽園であろう。
 一方でまた実妹、つまり近親相姦は現実社会を超えたものとして人々を魅了し続けてきた。人形愛同様、現実の人間関係を絶ち切り二人だけの世界に生きるという意味で楽園と言ってもいいだろう。この点を踏まえるとルイリーは近親相姦と人形愛という二重の楽園を身に孕んでいることになる。だが、いやだからこそ、楽園の快楽以上に恐ろしいものとしても感じられる。楽園は現実から隔たった究極の世界であるが、同時に何も生み出すことも、変化することもない停止した世界だからである。ここで澁澤龍彦のエッセイ「ユートピアの恐怖と魅惑」から一節引用させていただく。

しかるに、ユートピアの停滞性は、ほろびることもなく、甦ることもない。
人類の究極目的性という曖昧な夢を絶対的に固定しようとする、                         
これがユートピアの恐怖であり、そしてまた、魅惑でもあろう。

澁澤龍彦『神聖受胎』「ユートピアの恐怖と魅惑」より

 まさにラストシーンの桃園である。変化をし続ける現実社会から閉ざされた永遠の世界、二人だけの止まった世界。しかし、そこでは何も生まれないし、死ぬこともない、尽く人間の意志が否定された世界でもある。だから、息苦しく恐ろしく感じられる。「妹の魅力とはじっくり溶かされていくかのような魅力」というのは言い換えればユートピアの魅力と恐怖でもあったのだろう。二重の楽園を身に宿したルイリーは恰もブラックホールのような存在に思えてくる。魅了されて近づいたが最期、どこまでも吸い込まれて逃れられない、そんな存在である。

                                                            

・ソフ倫のみぞ知るセカイ

 妹に対する哲学というか思想めいたものは、同時期に発売されたライアーソフトの「腐り姫」からも感じられる。その思想とは、ざっくり言ってしまえば「なんとかしてソフ倫の目をごまかして実妹とセックス」というものではなかろうか。(だが一方で鬼哭街は妹との本番はおろか前戯すら無し。)当然、近親相姦は現実社会では禁じられている為、二次元と言えど完全に自由とはいかない。もし、描きたいのならば、やはりただの人間ではやりにくい。だから、腐り姫では妹である樹里(正確には蔵女)も兄である五樹も神如き存在になるのではないか。世界中の神話が語り継ぐように神様なら近親相姦はやりたい放題だからである。これが生身の人間の物語であると、現実社会なら規制対象となり、虚構の中でもやはり悲劇的な結末は付き物になる。心中や離別は日常茶飯事である。神々の楽園を地上に再現すればそれは作品内でも現実でも無理があるというもの。まさに縁に穹るである。それだけ、実妹との深い関係は危ういものなのであろう。

                                                            

・「お兄ちゃん惑星」の存在証明 

 ヨスガにソラる、というと先日のWhite騒動が思い出される。さて、表題の「お兄ちゃん惑星」だが説明を加えておくと、ねこねこソフトのおまけシナリオで登場するこの宇宙に存在する全てエロゲーの妹達が集う惑星である。ここだけ抜き出して説明すると頭のネジが数本飛んでいるようにしか見えないが、Whiteヨスガ騒動の中核に位置する重要語句である。その騒動での問題発言のひとつに「実妹は邪道、義妹こそ王道。実妹に萌えたい奴はヨスガにソラってろ。」というものがある。そう、お兄ちゃん惑星は実は義妹の妹しか住むことを許されない世界だったのである!「だから何だ」というのは当然あるのだが、しかしここまで考察を進めてくるとまた違った一面が見えてきそうである。ねこねこソフトの売りは何と言っても日常である。だから、日常世界を脅かす危険がある実妹よりも擬似的な家族関係である義妹の方がテーマが際立つのだろう。特にねこねこソフトの描く日常は変化を続けながら進んでいくものだから、全ての変化を否定し尽くす近親相姦ユートピアとは発想が正反対である。ユートピアと日常は水と油、もし日常を優先したいのであれば「義妹こそ王道」。もし、宇宙全ての実妹の住む惑星があるとしたら、それは神々のパンテオンであり、人智を超えた所なのだろう。実妹の住む「お兄ちゃん惑星」の存在証明は、神の存在証明に等しい。

                                                            

こんなに可愛いわけがない

 ここまで鬼哭街を軸に実妹について語ってきたが、思い返せばシスタープリンセスの単行本なども一種の恐怖と狂気を喚起するものであったように感じられる。あの理想過ぎるが故の閉塞感は中々忘れることが出来ない。みさくらなんこつの同人誌「瓶詰めシスターズ」も元ネタが夢野久作の「瓶詰め地獄」であり、これも兄妹の近親相姦ものであったことを考えるとやはり実妹とは業が深いものだ、と感嘆せざるを得ない。実妹は神々や人形などに類推することが可能故なのかもしれない。禁断の楽園なのだ。妹に対する思いは人それぞれではあるだろうが、人々が地上の現実世界に生きる以上、天の蒼穹が如く魅了する存在であり続けるだろう。

 ちなみに私は黒猫派です。後輩萌え。妹の友人が一番おいしいと思うよ、うん。

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