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2011/08/08

Rewrite レビュー

-書き換えることが出来るだろうか。彼女の、その運命を。 

 だいぶ発売から間が空いてしまったけれど、Key最新作のRewriteをコンプ。

 やはり各所で言われているように、各ルート間の連絡不十分・不調和がかなり目立った。よく竜騎士氏が槍玉に挙げられるが、違和感は別に竜騎士氏の担当部分だけでないように思う。各シナリオの雰囲気・印象や主人公の行動原理が噛みあっておらず、まるでオムニバスを見ている気分になった。(ネタバレ感想の方で後述するが、それは思想の相違を意図的に表現したものだろう)しかし、オムニバス形式に徹すればそれなりに良かったと思うがそうでもなく、最終的にトゥルールートに合流してエンディングから振り返ってみるとやはりゲーム全体としてはバラバラに分裂している印象が拭えない。個々のシナリオの中には素晴らしいものもあっただけに、勿体無いとしか言いようがない。

 また、システム・ゲーム性だが、共通ルートのマップ探索やクエストが地味かつ作業的で、リトバスと比べると見劣りする。折角、最新の自社製エンジンを積んだのだからもっと思い切ったミニゲームがあっても良かったのでは、と思った。(ダンジョンRPGとか)ゲーム性のある前半と後半の超展開が乖離してしまっていると感じるのは以前の記事で書いたのと同様。期待が大きすぎたのかもしれないが、やはり残念である。

 音楽はやはり素晴らしい。特に静流エンドの曲、トゥルーエンドの曲は個人的にはKey歴代作品の中でも屈指の名曲だと思う。サントラ欲しい。

・総評 ○75点

 個別シナリオで見ると素晴らしいものもあったけれど、やはり全体を俯瞰して判断とすると不満が残るというのが正直な感想。人によっては、後半の個別ルートに入る前に飽きてしまったり、ルートごとの違いに萎えてしまったりするかもしれない。そういう意味では取っ付きにくいトリッキーな作品であったように思う。ただ、問いかけようとしたものに鬼気迫る力があることは確かで、その為に全体の調和を犠牲にしてしまった感がある。自分としては守りを捨てた挑戦作のように感じられた。間違いなく印象的な作品だった。

以下ネタばれ雑感。長文注意。クリア済みの人、クリアする気のない人、おっぱいいっぱい揉みたい人のみ閲覧推奨。

                                              

まず、個別ルートの雑感から。

・ルチア

 竜騎士氏担当シナリオ。各所で完膚無きまでにボコボコに叩かれているが、流石に過剰反応だと思う。実際、前半のオカルト部分からミステリを経て超展開に持っていく手腕・ストーリーテリングは三人の中では一番巧かった。これがミステリなら叩かれて当然だが(謎の解明を不思議パワーに頼るという意味で)Rewriteはミステリではない。その意味では、竜騎士氏を起用した采配は単に話題性を求めてのことではなかったのだろう。適任であった。だが、不味い部分もないわけではなかった。体験版の頃から分かりきっていたことだが、まず文体や雰囲気を周囲と合わせようという意図が欠片も感じられない。思想や行動原理以前にキャラの性格が違いすぎて統合失調症レベルだった。また、シナリオを書く上で基本である人称の統一が不十分過ぎた。一人称視点の部分で突然三人称の視点が混入することがあり読みにくいことこの上ない。これらはいくらでも修正が効く部分だけに、プロとしての意識が足りないといった批判は受けても仕方ないのではないだろうか。後、それとは別に、後半部分での倫理感ぶっ飛び具合が気になった。何十万人が死んでいる街中で、かつての部活の仲間や吉野のことを心配もせずガン無視してギャグをかます余裕がある瑚太郎君には違和感をおぼえずにはいられない。

・ちはや

 王道少年漫画的な熱いシナリオ。心を支え合えるヒロイン、心の闇の部分を侵してくるライバル、先駆者として壁となり立ち塞がる師匠ポジション…まさに王道のキャラ配置。異能バトル、修行、友情、そして勝利… 胸から熱いものがこみ上げて来る。個別ルートの中では少ないハッピーエンドの一つでスカッとする。真っ赤な誓いやゴングが鳴っても違和感はゼロである。しかし、何故かセカンドメインテーマであるサイラバの「Rewrite」が流れない。何故だ。このルートが一番曲調にあったシナリオなのに… (すみません、ミドウ戦で流れてました… おっぱいルートの影響でミドウ君の印象を書き換えてしまっていたので気付かなかった… みんなやさしくしてください!)それと、師匠ポジションである咲夜がかっこ良過ぎて濡れてしまう。だが、その分ヒロインの筈のちはやが食われている。ちょうどFate/stay nightのUnlimited Blade Worksルート的な感じというと物凄くしっくり来るような気がする。そういう意味ではこのルートはちはやシナリオではなく、瑚太郎へ意志を託した咲夜が救われる咲夜シナリオだった。そして、このバトンの受け渡しがその後のトゥルールートで重要な意味を持って来るとは…この辺の伏線回収は鳥肌が止まらなかった。

・朱音

 恐ろしくブラックでシニカルなシナリオ。結末には全く共感できないが、絶望感を与える意味では凄い話だった。このルートではガイアの中核思想が明かされるが、その内実はキリスト教的な僧侶道徳・弱者救済思想であり、人類を滅亡させて自然を永らえさせようというマニフェストは実はただ人間の生を憎む人々のルサンチマンでしかないことが明らかになる。名前からして汎神論的なモチーフを持ったガイアでありながら、そこにキリスト教的な価値観を転倒させて持ち込んでいる辺り悪意が感じられる。そこで紡がれる話は、狂信的なテロリズムに恋人の朱音が深く関わっていることから、瑚太郎君は彼女を護る為殺人者となっていき世界の破滅に向かって転がり堕ちていくという暗澹たるストーリー… そういう意味では朱音はギャルゲー界では屈指の悪女だろう。(何しろ人類70億皆殺しである。)しかし、驚いたことに人類全殺しの主犯である瑚太郎君と朱音はシェルターに逃げ延びて生き永らえるというサプライズ。なんだこれは、ふざけるな、としか言い様がないが、そこからの展開が超ブラックである。非難用のシェルターの中で生き延びた人々は新しい暮らしを始めるのだけれど、その本質は純化された清貧精神であり人々は目を輝かせながら労働に従事していく。そして、滅んでいった人類を傲慢な者達と非難し、生き残った自分達は自然を破壊した罪を償いながら静かに消え去ることを望み慎ましく生きていく… さながら人類最終刑務所の如く、笑顔で誰も疑問に思わずに… 一方、戦犯である瑚太郎君と朱音は裁判で死刑を免れて、共同体から永久追放となり、世界の果てで決して償うことの出来ない大罪を二人で背負い生きていくことを誓う。最後に自然に囲まれた牧歌的な風景の中で二人が笑い合ってEND… 背筋が凍る程の悪意と絶望を感じずにはいられない。どうしようもない弱さを前に、それでも強く生きて欲しいと願うことは強者のどうしようもない傲慢と罪なのであろうか… 個別シナリオの中では屈指の面白さだが、このシナリオが全体の不調和の一つの要因であることには違いない。

Moon

 トゥルーエンドへのインターバル。ここに来て、初めて篝のキャラが立つ。このルート解放までに40時間くらい掛かったので、真ヒロイン登場が遅すぎる、とは思う。シナリオの都合によって不遇になったトゥルーヒロインである。幻想的な不思議世界で篝と交流していく、その雰囲気が独特で面白い。後半からは現世側の仲間が召喚され、魔物軍団との総力戦を繰り広げる。ちょうどOPムービーの場面で、Rewriteの山場の一つだろう。またここに来て、ようやくRewriteの世界観全体が明らかになる。魔物や超能力、ガイアやガーディアンの設定がかなり練り込まれていることにはっとさせられる。もうMoonをクリアすればそのままの勢いで最後のルートTerraまで一直線である。

Terra

 最終ルート。瑚太郎君の過去が明かされ、散りばめられた伏線が一気に回収される。全ルートで最も暗く重いストーリーだが、それを負担にさせない求心力があり一気に読めてしまう。ここに至るまで超展開・異能バトル・ブラック展開・不思議空間とむちゃくちゃに推移してきたRewriteだが、しかしその終わり方は鍵的な収束だったように思う。調和した自然の中で、奇跡と救済の可能性を探る、という意味では間違いなく鍵的世界観だった。Rewriteでは、「人間自体の可能性・命を信じ示すこと」こそが救済のトリガーとなっている。単なるご都合主義ではなく、世界観に裏打ちされた救済である。だが、世界規模の環境問題をどうするか、人類はいかにして生きていくべきか、という物凄く重い問いかけであるだけに、力技である印象は拭えない… それは現実社会の問いともリンクする訳で、安易に魔物・超能力で解決する結末を用意したことが違和感として残るかもしれない。やろうとしていたことは理解出来るのだけど、如何せん規模がでかすぎた。

                                              

                                              

・真女神転生的な

 Rewriteはヒロインルート毎に異なる思想背景・イデオロギーに行き着くことになる。おおまかにガイアによる弱者救済・来世信仰の思想、ガーディアンによる社会維持・現世利益の思想に二分される。この二つのイデオロギーを背景に異能者たちが殺しあうのがRewriteであるが、これは真・女神転生を思い出させる構造である。また、問い掛け(世界を変えるか、自分を変えるか)に対して思想を選択し、それに準じて主人公が己を書き換える、という発想も女神転生と類似する。(参照key「Rewrite」、メガテンですね…。地球の篝=真・女神転生2ヤハウェ、ガイア=ロウ・メシア教、ガーディアン=カオス・ガイア教。Rewrite -魔界塔士SAGA編-。)しかし、この構造こそが各ルート間の不和を起こしているとも思われる。背景思想自体が違う為に、シナリオ進め方・色合いに凄く差が出てくる。アクの強いライター陣による連携不足、という問題もあるだろうが、根本的なイデオロギーの差異がそれを助長している。女神転生の場合、RPGのゲーム性を重視しストーリーを淡々と描いている為、これらの思想の違いや過酷さが良い意味で引き立つ。だが、ヒューマンドラマを基本として描かれるRewriteの場合、キャラに感情移入して読むのでどうしてもキャラの立ち振る舞いの違いに目が行って統一感に欠ける印象を与えてしまう。また、それと読む人間の価値観によっても特定のルートが不快に思えたり、受け入れられない弊害もあるだろう。合流するトゥルーエンドの締めが、「生命の理(という名の神)に従い自らの命を肯定すること」である為、人間固有の自由意志を求める実存主義的な発想を持つ人はやはり納得出来ないものかもしれない。自分の場合、保守的な思考の為、どうしてもガーディアン寄りに評価が偏る。やはり思想や価値観を問うのなら、それに合わせて何かしら整合性を損ねない工夫が必要だったのではないだろうか。RewriteはCLANNAD・リトバスから続く従来通りの個別ルートからトゥルーへ至るゲームスタイルである。個別のシナリオに力を入れたのはいいが、それに関わるゲームスタイルを考慮に入れなかった、これが不調和の原因だろう。個人的にRewriteはマルチエンディングのRPGにすべきだったと思う。割と真剣に。

・鍵の旅立ち

 Rewriteはかなり重い問題を扱った。前述の通り、自然環境問題・テクノロジー問題は、現実でも重要な問い掛けである為、一筋縄ではいかない。多分に啓発的である為、アレルギー反応が出る人もいるだろう。自分としては、自然に対する倫理を問う姿勢は特に問題ないのだけれど、その代償として日常のどうでもいい笑いが本筋から離れてしまっているように感じられるのが残念だった。前半の日常パートと後半のシリアスパートの乖離は根本的にその高い問題意識から生じているのかもしれない。個人的に、鍵のゲームの、日常の明るい場面から後半のシリアスへ繋げて行く際に見せるバカバカしさとシリアスの絶妙な匙加減が好きだっただけに、どうしてもRewriteには不満が残る。ただ、企画の時点でこうした解決が難しい問題を取り上げようとしたことは、旧来の鍵ゲーを「書き換える」為の挑戦でもあったのだろう。問題意識に切り込み、こちらに問いかけるという姿勢は主題歌である「Philosophyz」の通りである。真実の探求とは日常からの離脱に他ならない。Rewriteはそこに踏み込んだ挑戦作と言えるのではないだろうか。いつまでも停滞して同じところに留まり続けることは出来ない。何かを捨ててでも、そこにある輝きを次の場所へ運んで行かなければならない。Rewriteはそういうゲームだった。Rewriteは確かに賛否両論を呼んだし、万人向けではないかもしれない。だが、それでも、いやだからこそ、新しい鍵の「旅立ち」を祝福したいと思う。鍵ゲーを愛した一鍵っ子として。

 そしておっぱいも祝福したい…ホモ・オッパイモミスト… 静流のおp

Rewriteoppai3

                                              

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「もしまた終わりが訪れたとしても 君に届けたい この長い長い旅のその意味を
希望を繋ぐため」

~『Rewrite』 CANOE

「そして…銀河を目指す全てのおっぱいを愛する心へ、祝福を…」

~『Rewrite』 おっぱいEND

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コメント

>合流するトゥルーエンドの締めが、「生命の理(という名の神)に従い自らの命を肯定すること」である為
瑚太朗が「もう一度会いたい」という人間固有の自由意志を発揮して世界を救ってたような気がするんですが…

投稿: | 2011/08/11 17:07

確かにそういう見方もあるかと思います。
ただ、Terraルートの瑚太郎とMoonルートの瑚太郎はある意味別人格で、Moonルートの瑚太郎の意志をそのまま反映したと解釈するとTerraの瑚太郎の自由意志は完全に独立したものとは考えにくいとは思います。
また、瑚太郎の意志も篝の「生命が宇宙に広がっていく為」の計画に組み込まれたトリガーという見方も出来るので、完全な自由意志なのかというとちょっと微妙な感じもします。Terraルートでは選択肢が出るようで、ほとんど選択出来ませんし…
全く自由意志がなかったとは自分も思わないですが、そういう意図的な選択肢の出し方からして、運命なのか意志なのか、という問いは意識されてたんじゃないかと考えてます。

投稿: ネ右 | 2011/08/12 03:50

追記ですが、小鳥ルートの「魔物使い達も超能力者達も真実には遠いままでいた」と言う台詞から分かるように、真実に合致しない意志は「悪い記憶」扱いを受けて篝(地球)に滅ぼされる恐れがあるというのは作中で明示されているかと思います。真実に合致する(生命の理に従う)ことが篝の求める「良い記憶」です。記事内の自由意志・実存的な思想を持つ人云々の下りは、世界は偶然に満ち溢れていて自分の意志で切り拓くことが出来るという実存主義の思想とRewriteの展開は水と油かと思った次第で。

投稿: ネ右 | 2011/08/12 04:51

 こんばんわ。ルートごとにライターが違うなら、ちゃんとした調整も必要だと思います。竜騎士氏はアクが強いのがウリですが、シナリオごとにキャラの印象がちぐはぐではプレイヤーの違和感が強くなってしまいます。
 key系のゲームには明るくなく興味もあまり無かったのですが、今回のレビューは興味深かったです。

投稿: はらだいこ | 2011/08/12 20:36

こんばんわ。
各所で言われてる通り、ライターがそれぞれスタンドプレーをしてしまって調整が追いついてないという点がやはりマイナス要素になってしまっていると思います。その部分があまり考慮されていなかったのはやはり残念ですね… Key系のファンの感想も賛否両論ですし、Keyの中では特殊な立ち位置にある作品かもしれません。

投稿: ネ右 | 2011/08/12 23:26

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受信: 2012/02/15 18:29

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