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2012/07/01

ゆきいろ~空に六花の住む町~ レビュー

-…もしボタンひとつでも掛け違えたならば、この不思議な未来にはならなかっただろう…

 

 発売後、少々プレイせずに寝かせてしまったが、この度無事にクリアしたので『ゆきいろ』の雑感をここに記す。

 「伝統のみずいろシステムを搭載!」、と公式が銘打つだけあって、システムが複雑化した『そらいろ』に比べかなり分かり易い構成となっている。過去編の選択肢で未来が変わるといういつものアレである。(尤も、自分は明るい学園物シリーズは所々齧っただけなのだが)特に、チャレンジブルな所はないが、安定感はある。前作の『White』が変化球だったので、尚更そう感じる。まさに安産型。こうだ、こうだろうと予想した展開を裏切らないので、安心してその身を委ねられる。

 少々、残念な点は立ち絵の統一感が薄い所。特に、幼子と成長後を比べると違和感がくっきり出てしまう。あきらは、成長後「お前誰だ!」状態になってないこともない。ちなみに、幼子あきらも攻略したかった…というのは禁句。

 「六花のうた」「星雪と踊る」「ゆきいろ」、ボーカル曲はどれも素晴らしい。特に「六花のうた」「ゆきいろ」は、歴代でも指折りの良曲だと感じた。

 一言で『ゆきいろ』の印象を語ってくれ、と言われたら、「…もしボタンひとつでも掛け違えたならば、この不思議な未来にはならなかっただろう…」という表題を、そのまま返すのが一番しっくり来るだろう。この表題がプレイ後、心にストンと収まったなら、きっと存分に楽しめたと言えるのではないだろうか。 

 攻略キャラは五人だが、ちとせとあきらは実質サブシナリオ。プレイ時間大体25時間くらい?

 以下、各ルート感想。ネタばれあり。プレイ済みの人、ネタばれを気にしない人、ハダカ、組体操したい人のみ閲覧推奨。

 

 

・樹奈

 一人目。やかま。 ルートに入った瞬間、文体と雰囲気から早狩さんだと分かるルート。他ルートに比べて重い。他ルートがさらさらした粉雪なら、このルートはねっちょりした泥雪と言った印象。これはこれで普段おちゃらけている樹奈とのギャップが楽しめるので面白いのだが、自分は一人目に樹奈をプレイしてしまったので大層勿体無いことをしてしまった印象がある。それは、樹奈ルートだけだとお馬鹿なかけ合いが少ないので、どうにもその落差を味わえないと理由による。やかまキャラこそ、他ルートとのギャップが命であると思うので、残念なことをしてしまった。
 そのギャップが『ラムネ』や『みずいろ』などであれば、大人しい/やかましい、のリバーシブルだったのに対して、『ゆきいろ』の樹奈は一人の女の子が演ずる道化役の仮面の裏表でしかなかった、というのは新鮮だった。
 一方で、マルとの三角関係の一角を担ったり、過去の事件に関わる重要人物なのにも関わらず、当のマルルートとの印象が違いすぎて繋がりが薄いように感じられるのは少々しょんぼり。

 

・あきら

 二人目。実妹ルート。ヨスガにソラってろ!
サブルートで、あくまでおまけ程度の印象。CV夏野こおりの実妹とイチャラヴするのが十割、という非常にゆるいルート。あきらかわいい。前回のヨスガ騒動が尾を引いた分、実妹の扱いには慎重になったのかもしれない。ただ、『White』のほたるとあきらは依然として実妹キャラ故にお兄ちゃん惑星に行けないという悲しい業を背負わされているので、そろそろ、ともさんは実妹キャラを真剣(マジ)で書いて彼女たちを救ってあげて欲しい、とか思わざるを得ない。お兄ちゃん惑星は全ての妹たちの故郷であるべきだ…!

 

・ちとせ

 三人目。巫女後輩。三つ子とセット。三つ子の上と下がいい味を出していて面白い。
個人的に妹の友達という素晴らしくツボなキャラなので終始ほっこりしていた。ただ、三つ子の上と下とのえちぃがないのがしょんぼりである。上と下のハニートラップに手を出してしまいバッドエンド、という展開があるかと思ったが… おかえしCDやファンディスクで4Pを期待したい…

 

・翠子

 四人目。先輩。多分、いつもの感じからしてシナリオはウナトミーさんだと思われる。所々、距離と時間にまつわるフレーズが出て来て興味深い。飛行機で一時間半という距離、過ぎ去った十年という時間、という言い回しはとても。人によっては『ラムネ』のジャージ先輩を思い出すかもしれない。関係あるようでないが、まきいづみの担当キャラが今回はおかん役で、それが堂に入り過ぎていて怖いとすら思ったのは秘密だ。ギリセーフ。

 

・マル

 五人目。義妹兼幼馴染。お前ら早く結婚しろよ、と終始にやにや見守ってしまった。微ぽんこつ幼馴染は兵器なのだと認識せざるを得ない…

 プレイした後の読了感は『サナララ』に似ている。小道具とワンフレーズがうまい具合にアクセントとなっていて、直球なのに、心に突き刺さってしまった。

 「…もしボタンひとつでも掛け違えたならば、この不思議な未来にはならなかっただろう…」というフレーズ、と「ボタンを掛け違えたとしても、また掛け直すことが出来る」というフレーズが全てを物語っている。健ちゃんとマルがずっと一緒にいると誓う話なのかと思いきや、実は影の主役は別の未来を辿った新マルだったというサプライズ。不満がない訳でもない。新マルに焦点を当ててパラレルワールドとして本編を見ると、「仲睦ましいふたりの世界は、本当は夢や幻だったのではないか」、とハラハラもする。あまりに儚い。それだったら、余分なことはせず健ちゃんとマルの未来を描いていけばよかったのではないか、という意見も肯けるものがあるのは確かだ。

 しかし、「もしあの時手を差し伸べなければ(取らなければ)未来はどうなっていたのだろう」という、過去のみずいろシステムへのカウンターとして新マルの存在は良い意味で引き立て役となっていて、直接未来を描かないことを補完しているように思う。新マルの、選ばれなかった(選べなかった)者の恨み言や悲しみとしての独白は、繋がりの儚さそのものだ。しかし同時に、仮に別れて離れてしまってもまた結び合えるという二人の希望になる、そのラストシーンはとても真っ直ぐで力強い。「ずっと一緒」という言葉が、二人のマルによってボタンが綺麗にかけ合わされたように、胸にストンと収まった。いやあ、幼馴染って本当にいいものですね!

 また、幼子が寝てる横で、主に腰の部分が動く組体操に励むというシチュエーションは素晴らしかった。これを目撃したならば、幼子のメンタルにはトラウマになりかねない、というスリルがグッとくるね!是非、ファンディスクでは小マルを交えてミッドナイトさっぽろ雪まつりをしてもらえると、おじさんは嬉しい。ものべのりたい。

 

 やはり、終始『ゆきいろ』に感じたのは、安心感だった。マルルートなんかは、過去編と組み合わせてもっと面白い仕掛けを組み込めそうな気もするけれども、しかし奇をてらわなくて正解だったように思う。出来れば冬にプレイしてこたつみかんの先からゆったり見守っていたかった。そんな風に思える一本であった。

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